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- 315.CQ15 AVS施行時にACTH負荷は推奨されるか
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2018年09月19日
山本“KID”徳郁選手の訃報
2018年09月17日
原発性アルドステロン症のまとめの解説②(機能確認検査~)
①内科医院で高血圧患者がスクリーニング(最初の血液検査)を受ける。
②引っかかった患者が紹介などで、機能確認検査を受ける。
今日はその機能確認検査、からです。
2.機能確認検査
スクリーニング検査(最初の検査)にてPAを疑った患者については,
アルドステロンの自律性ならびに過剰分泌を確認するため,
(アルドステロンが(何かの指令によらず)勝手に出ているか、そして、じゃんじゃん異常に出ているか、を確認するため)
機能確認検査(1カプトプリル試験,2生理食塩水負荷試験,3フロセミド立位試験,4経口食塩負荷試験のどれか)を行う。
上記4種類の検査のうちで,少なくとも1種類の陽性の確認で、原発性アルドステロン症とすることを推奨している。
2―1.カプトプリル試験
外来でも実施可能。
アルドステロン自律分泌を確認することを目的としている。
(アルドステロンが勝手に出ていることを確認する検査)
すなわち,
ACE阻害薬であるカプトプリルによりアンギオテンシンⅡを低下させても,PACが低下しないことを確認する。
(アンギオテンシンⅡが低下すると、普通ならPAC(アルドステロン)は低下する。しかし低下しないとなると、勝手に出ちゃっているということになる)
検査方法は、
①カプトプリル内服前,内服60分後,90分後に採血を行い,
②ARR(60分ないし90分後)>200を陽性と判定する。
(カプトプリルという薬を飲む前に採血、飲んでから60分後と90分後に採血。ずっと寝ておく。患者はらくらくー。)
感度は優れるものの,特異度はやや低い。
(感度は敏「感度」。感度が高い検査は除外診断に有効、特異度が高い検査は確定診断に有効。なんのこっちゃ。
感度=PAの患者のうち、正しく陽性(病気)と出る人の割合のこと。見落とし(偽陰性)の少なさを反映する。
特異度=PAでない人のうち、正しく陰性(正常)と出る人の割合のこと。過剰診断(偽陽性)の少なさを反映する。
感度=病気の人を病気だって診断できる割合
特異度=病気じゃない人を病気じゃないって診断できる割合。ってことかな
つまり、カプトプリル検査は、病気の人を病気だって自信を持って言えるけれど、病気じゃない人も病気って言っちゃうこともたまにある検査、ってことかな)
2―2.生理食塩水負荷試験
これもアルドステロン自律分泌を確認することを目的とする。
(アルドステロンが勝手にじゃんじゃん出ている、ということを確認する検査)
日本以外ではこの生理食塩水負荷試験がゴールドスタンダード(一番良く使われる検査)とされている試験である。
生理食塩水2リットルを4時間かけて点滴静脈注射を行い,
投与前後でPRA(レニン活性)とPAC(アルドステロン血漿)を測定する。
PA(原発性アルドステロン症)では生理食塩水をどんどん入れて循環血漿量を増加させてもPACが低下しないことを確認する。
すなわち,
負荷後のPACが60pg/mlを下回らない場合に陽性と判断する。
心臓や腎臓機能に負担がかかるので、心・腎機能を検査前に十分に評価を行い,
高血圧ならびに低カリウム血症のコントロール注意が必要である。
2―3.フロセミド立位試験
レニン分泌を刺激し,レニン分泌抑制の程度を評価することで
アルドステロン過剰分泌を機能的に評価することを目的とした試験である。
(原発性アルドステロン症の人は、アルドステロンが高いのでレニン活性は常に低下している。
レニン活性を促進する負荷をかけ、それでもレニン活性があがってこないなら、その人は原発性アルドステロン症ということになる。
フロセミド(ラシックス)は強力な利尿薬であり、循環血漿量が減る。また、立っていると寝ているときの半分ほども腎臓の血液量が減る。これで普通ならレニン活性が上がるはずだが、原発性アルドステロン症の人は上がってこない。)
フロセミド40mgを静脈注射後,2時間立ったままを保持し,立位のまま採血を行う。
循環血漿量が減少してもレニンが抑制されたまま(低いまま)であることを確認する。
2時間後のPRA値が2.0ng/ml/h未満で陽性と診断する。
脳心血管イベントリスクの高い症例・不整脈が誘発されうる症例に対しては行わない。・
(脳・心臓・血管が弱い人や不整脈が出てしまうであろう人には行わない。倒れる人続出の検査である。・・・しかし、倒れる人はそれほど重い原発性アルドステロン症ではない場合が多い、らしい。)
2―4.経口食塩負荷試験
アルドステロン自律分泌を確認する試験である。
経口的に食塩負荷を行い,循環血漿量を増加させたときに,正常ではPAC値は低下するが,PAでは低下しない。
入院中の患者であれば,
食塩負荷食(10~12g/day)を3日間負荷後に24時間畜尿を行い,24時間尿中アルドステロン値で判定を行う。
生食負荷試験に比較すれば,外来検査でも実施可能ではあるが,合併症の多い症例では入院下での検査が望ましい。
PAの確定診断が得られた場合,
病型・局在診断目的で画像診断を行う。
PAの原因が,
アルドステロン産生腺腫(aldosterone-producing adenoma:APA)をはじめとする片側性であるのか,
特発性アルドステロン症(idiopathic hyperaldosteronism:IHA)をはじめとする両側性であるのかの鑑別が必要である(表2;文献[7]より引用)。
両側性分泌であれば,
手術による根治は困難であり,スピロノラクトンやエプレレノンなどの薬物療法が適応となる。
両者の鑑別のために,
まずはCT/MRIといった非侵襲的検査を行う。
通常のAPAは径が1.5cm未満のものが多いことから,
thin sliceでのCT検査が推奨されている[5]。
また,
腫瘍の病型診断および後の副腎静脈サンプリング(Adrenal venous sampling:AVS)のためにも,可能であれば造影CTが望ましい。
副腎腺腫検出におけるCTおよびMRIの感度・特異度の差を示すエビデンスはなく,
CT実施に制限がない限り,まずはCT検査を第一としている。
片側性分泌の可能性が高いと判断し,手術希望のある症例はAVSへと進む。
PAの最終的な手術適応の判断に際しては,AVSが必須である。
必須であるとする理由として,
950例の症例を用いたmeta-analysisで,
AVSとCT/MRIの結果を比較すると,37.8%の不一致があったとの報告があり[8],
CTなどで指摘される副腎結節が必ずしもアルドステロンを過剰分泌しているとは限らないからである。
AVSの省略の可否に関しては,
副腎偶発腫が少ない若年者に限り,一定の要件(35歳以下,低カリウム血症,片側腫瘍を確認できていることなど)を満たせば,AVSの省略を考慮してもよいが,十分なインフォームドコンセントが必要である[5]。
AVSの手法として,
左右副腎中心静脈でACTH刺激後に確実に採血を行う(図3)。
迅速コルチゾール濃度測定を用いて即時に判定を行うことも可能である。
SI(Selectivity Index;副腎静脈と下大静脈または末梢静脈とのコルチゾール濃度比)および副腎静脈血中コルチゾール濃度を考慮して,
カテーテル挿入の成否を判定する(図4)。
アルドステロン過剰分泌の判定においては,
PAC絶対値,LR(lateralized ratio;PAC/コルチゾールの左右比),CR(contralateral ratio;PAC/コルチゾールの副腎静脈・下大静脈比)を用いる(表3)。
今回のステートメントでも明記されていることではあるが,
LR,CRのカットオフ値に関しては,LR>4かつCR<1が最も一般的である[5]。
PAC絶対値の評価基準に関しては,
副腎静脈PAC>14,000pg/mlによって過剰側判定を行うことが推奨されているものの[9],今後も検討が必要とされている。
副腎静脈サンプリングで用いられる指標(文献5より)
副腎皮質シンチグラフィー(131I-アドステロール®シンチ)がAVSの代替となりうるかどうかに関しては,
131I-アドステロール®の集積が主に腫瘍径と相関し,アルドステロン産生性との相関性が弱いため,微小腺腫では偽陰性を呈する可能性がある[10]。
また,両側性病変でも集積に左右差があれば片側性と診断してしまうこと,サブクリニカルクッシング症候群を合併していた場合,その集積をPAと判断してしまうこと,
などの理由により,AVSを上回るようなものではないとされている[2]。
また,
近年ではシンチグラフィーの断層撮影であるSPECTが一般的となっているが,米国内分泌学会の策定したガイドラインには記載がない[1]。以上より,
AVSが実施困難症例・サンプリングエラーが生じた症例ならびにAVSを希望しない症例に対してのみ,デキサメサゾン抑制下副腎シンチグラフィーSPECTの施行を検討する。
副腎腺腫に代表されるPA片側病変に関しては,
血中アルドステロン濃度の正常化および高血圧の治癒や改善が期待できるため,病側副腎摘除術が推奨される[5]。
しかし,副腎腺腫によるPA治療においても,副腎摘除術がミネラルコルチコイド拮抗薬(MR拮抗薬)よりも長期的な臓器障害改善や生命予後に優れていることを示す明確なエビデンスはないので,
治療選択に関しては,患者に十分なインフォームドコンセントを得た上で決定すべき事項である。
PA両側症例や手術を希望されない片側症例に対しては,
MR拮抗薬を中心とする薬物治療を行う[5]。
しかし,
長期予後への影響は明らかではないため,個別の患者ごとに治療法を選択する必要がある。
PA治療後には,手術療法でも薬物治療でも,腎機能が悪化する場合があることには注意が必要である[11]。
PA診断の最新の指針である,日本内分泌学会編「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」に沿った形で,診断過程・治療指針について解説を行った。
特徴としては,
診断のプロセスを明文化し,エビデンスの蓄積を図っていくことに重点をおいた内容と理解できる。
また,AVSの重要性についても共通の理解として明記されている。
今回の策定によってエビデンスが蓄積されていけば,更なるガイドラインの改訂も予想される。
外科的治療を行う立場であっても,診断過程指針の変遷に関して,今後も注意が必要である。
- 1. Funder JW, Carey RM, Mantero F, et al.: The Management of Primary Aldosteronism:Case Detection, Diagnosis, and Treatment:An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab 101: 1889-1916, 2016
- 2. Funder JW, Carey RM, Fardella C, et al.: Case detection, diagnosis, and treatment of patients with primary aldosteronism:an Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab 93: 3266-3281, 2008
- 3. Ogihara T, Kikuchi K, Matsuoka H, et al.: The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH209). Hypertens Res 32: 3-107, 2009
- 4. Nishikawa T, Omura M, Satoh F, et al.: Guidelines for the diagnosis and treatment of primary aldosteronism--the Japan Endocrine Society 2009. Endocr J 58: 711-721, 2011
- 5. 日本内分泌学会「原発性アルドステロン症ガイドライン実施の実態調査と普及に向けた標準化に関する検討」委員会編:わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント 診断と治療社,東京,2016.
(コピペここまで↑)
いやあ、わかりやすいまとめでした!!!!さすがですねえ☆彡
私が調べ始めた2014年からは、隔世の感があるなあ。原発性アルドステロン症についての医療界の周知について。ここまでしっかり書いてあったら、診断後に手術を請け負う外科医や泌尿器科医だけでなく、患者もわかり易いと思います☆ - 読んでいただきありがとうございます。1日1回ずつ次の二つを押して戻ってきていただけると励みになります。よろしくお願いします。
- 私のもう一つのブログ「さよならしこり」(乳がんのブログ)も読んでくださると嬉しいです☆
2018年09月16日
原発性アルドステロン症のまとめの解説を試みる(初心者用)①(概要・スクリーニング・機能確認検査(1カプトプリル負荷))
〇原発性アルドステロン症は,高血圧患者の3~10%に認められる。(結構多いのである。)
〇適切な診断・治療を行えば治癒可能な疾患である。(と言われているが、そうは問屋が卸さないことも多い)
〇心臓病や腎臓疾患などの臓器障害の頻度も高く,早期診断をする意義は高い。(と言われているが、本当にそうかどうかはわからない)
〇日本では長らく,日本高血圧学会,日本内分泌学会の両学会が別の診療ガイドラインを出していた。(というか、日本内分泌学会が積極的で、日本高血圧学会は原発性アルドステロン症についてはそれほど重きを置いていなかった。)
〇各ガイドラインにおいて診断手順に相違があり,専門医・施設間で,診断の指標・検査方法・判定基準などの詳細は十分に標準化されていなかった。(各ガイドラインだけでなく、アメリカでもヨーロッパでも日本の医科大学間でも共通のやり方はもとより、数値的にも何を基準とするかはバラバラであった。そこが患者が一番疑問に思うところであった。)
〇日本における診療指針の統一化を図るため,2016年4月に日本内分泌学会より「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」が策定された。(これを見たとき、非常に見やすい、と思ったのとともに、『癌』のガイドラインとは別の指標なんだな、とも思った。しかし、非常な進歩だと思った。)
〇外科医(泌尿器科医,内分泌外科医)も診断過程を熟知しておく必要がある。(原発性アルドステロン症は、診断と取りまとめは「内分泌内科医」が行い、確定診断のAVSは「放射線科医」が行い、手術は「外科医か泌尿器科医」が行い、その後のフォローは「内分泌科医」が行う、という三者が連携して行う疾患だ、ということを患者は追い追い知って行くことになるのですねえ。患者も最初から知っておく必要があると思います。)
本稿では,副腎手術に携わる外科医の視点から,最新の診療指針の整理を行いたいと思っている。(よろしくお願いします)
原発性アルドステロン症(primary aldosteronism;PA)は,
アルドステロンというホルモンが、(ホルモンというのはちゃんと制御されているはずなのに、)
勝手にじゃんじゃん出てしまうので、
①水とナトリウム(Na)が貯めこまれることによる体液依存性の高血圧(そういう人はむくんでいる。)
②低カリウム血症(血液のカリウム濃度が低いこと)
③代謝性アルカローシス(血液のアルカリ性度が高くなりすぎた状態)
を呈する疾患である。
高アルドステロン血症自体が心血管障害のリスクとなる(アルドステロン自体が心臓や血管に悪さをする)ため,
心臓病や腎臓病になる頻度も高いので、早期診断・早期治療をする意義は高いと言われている。
PA(原発性アルドステロン症)を呈する腺腫(良性の腫瘍)に関しては,
機能性副腎腫瘍(勝手にホルモンを作りだす副腎に出来た腫瘍)のなかでも,
褐色細胞腫やクッシング症候群のように厳重な周術期管理が必要ではなく,
また,腫瘍径も大きくないので,摘除は容易である印象がある。
(つまり、「褐色細胞腫」や「クッシング症候群」と診断されたら重大案件で一大事だけれど、「原発性アルドステロン症」は外科医にとってはそれほど手術が大変じゃない、というイメージがあるということ)
だたし局在診断が必ずしも容易でない症例(AVSでも右副腎の腫瘍か左副腎の腫瘍かどちらがアルドステロンをじゃんじゃん出しているかわからない)もあり,個々の診断過程を外科医も十分に理解した上で治療に当たるべきであると考える。
検査の選択と進め方
〇最初の検査(スクリーニング)は、高血圧の人が病院に来たら全員に行うのが原則であるが、
特に以下の人は原発性アルドステロン症の可能性が高いので注意しておく。
①低カリウム血症
②若年性の高血圧
③Ⅱ度以上の高血圧
④治療抵抗性高血圧
⑤副腎偶発腫瘍の存在
⑥40歳以下で脳心血管合併症を認める患者
1.PAC値・PAC/PRA比について
〇スクリーニング検査(最初の血液検査)で最も簡便な検査は,
血漿アルドステロン濃度(plasma aldosterone concentration;PAC)
と血漿レニン活性(plasma renin activity;PRA)
を同時に測定することである。
PAでは原則として,
①PAC(血漿アルドステロン濃度(plasma aldosterone concentration;PAC))が上昇し,
②PRA(血漿レニン活性(plasma renin activity;PRA)が減少するため,
③ARR(Aldosterone Renin Ratio=PAC/PRA)が上昇する。
(つまり、レニン(PRA)がアルドステロン(PAC)を制御できていないってこと)
ARR単独では偽陽性となる可能性があることから,
(つまり、それだけでは数字のマジックで見かけ上 陽性になってしまっていることがあるってこと)
ARRに加え,
PAC 120pg/ml以上であることを組み合わせることが推奨されている。
(つまり、アルドステロンが一定数以上異常に多く出ているってこと)
ARRのカットオフ値(どの数値で切るか)に関しては議論の分かれるところ(何を持って普通と違うとするか)ではあるが,
日本内分泌学会[4],日本高血圧学会[6]のいずれもが
「ARR>200」を陽性
として推奨している。
(以上をまとめると、つまり、最初の検査(スクリーニング)では、血液検査で
①PAC 120pg/ml以上である
②ARR(Aldosterone Renin Ratio)
=血漿アルドステロン濃度(plasma aldosterone concentration;PAC)/血漿レニン活性(plasma renin activity;PRA)
が200より大きい
の二つを持って、
「原発性アルドステロン症の疑いあり」
となり、次の検査(機能確認検査)にコマを進めることになるということです。
つまりですねえ、ここで①②が当てはまらなかったら、原発性アルドステロン症ではない、ということですね。あるいは原発性アルドステロン症であっても、軽いということですね。原発性アルドステロン症においては、重大案件なのは「重症者」なので、「軽症」の人は過剰に心配しなくて大丈夫です。なぜか軽症の人ほど過剰に心配する傾向があります。←これは本当に私の勝手な感想です)
PACおよびPRAに関しては,種々の条件から測定ごとの変動を示すことがある。
日常臨床においては,簡便さが求められるスクリーニング検査としては,実施条件を厳密化することは望ましくないので,
まずは随時条件で測定を行い,適宜,厳密な条件(早朝,空腹,安静臥床後)での追加検査を行う[5]。
(ホルモンは色んな条件で出方がうんと変わる。日内変動もある。しかし、最初の検査(スクリーニング)はふるい分けの検査なので、まず検査してみて引っかかってきたら、色々厳密にして追加検査を行う。厳密の内容は、「早朝」「空腹時に」「横になって」「安静にしてから〇〇分後に血液検査する」など)
スクリーニング検査(最初の検査)にてPAを疑った患者については,
アルドステロンの自律性ならびに過剰分泌を確認するため,
(アルドステロンが(何かの指令によらず)勝手に出ているか、そして、じゃんじゃん異常に出ているか、を確認するため)
機能確認検査(1カプトプリル試験,2生理食塩水負荷試験,3フロセミド立位試験,4経口食塩負荷試験のどれか)(表1)を行う。
上記4種類の検査のうちで,少なくとも1種類の陽性の確認を推奨している[5]。
2―1.カプトプリル試験
外来でも実施可能。
アルドステロン自律分泌を確認することを目的としている。
(アルドステロンが勝手に出ていることを確認する検査)
すなわち,
ACE阻害薬であるカプトプリルによりアンギオテンシンⅡを低下させても,PACが低下しないことを確認する。
(アンギオテンシンⅡが低下すると、普通ならPAC(アルドステロン)は低下する。しかし低下しないとなると、勝手に出ちゃっているということになる)
検査方法は、
①カプトプリル内服前,内服60分後,90分後に採血を行い,
②ARR(60分ないし90分後)>200を陽性と判定する。
(カプトプリルという薬を飲む前に採血、飲んでから60分後と90分後に採血。ずっと寝ておく。患者はらくらくー。)
感度は優れるものの,特異度はやや低い。
(感度は敏「感度」。感度が高い検査は除外診断に有効、特異度が高い検査は確定診断に有効。なんのこっちゃ。
感度=PAの患者のうち、正しく陽性(病気)と出る人の割合のこと。見落とし(偽陰性)の少なさを反映する。
特異度=PAでない人のうち、正しく陰性(正常)と出る人の割合のこと。過剰診断(偽陽性)の少なさを反映する。
感度=病気の人を病気だって診断できる割合
特異度=病気じゃない人を病気じゃないって診断できる割合。ってことかな
つまり、カプトプリル検査は、病気の人を病気だって自信を持って言えるけれど、病気じゃない人も病気って言っちゃうこともたまにある検査、ってことかな)
長いから、今日はここまでにします。
2―2.生理食塩水負荷試験
本試験もアルドステロン自律分泌を確認することを目的とする。
本邦以外ではゴールドスタンダードとされている試験である。
生食2Lを4時間で点滴静注を行い,投与前後でPRAおよびPACを測定する。
PAでは循環血漿量を増加させてもPACが低下しないことを確認する。
すなわち,
負荷後のPACが60pg/mlを下回らない場合に陽性と判断する。
心・腎機能を検査前に十分に評価を行い,高血圧ならびに低カリウム血症のコントロールが必要である。
2―3.フロセミド立位試験
レニン分泌を刺激し,レニン分泌抑制の程度を評価することで
アルドステロン過剰分泌を機能的に評価することを目的とした試験である。
フロセミド40mgを静注後,2時間立位を保持し,立位のまま採血を行う。
循環血漿量が減少してもレニンが抑制されたままであることを確認する。
2時間後のPRA値が2.0ng/ml/h未満で陽性と診断する。
脳心血管イベントリスクの高い症例・不整脈が誘発されうる症例に対しては行わない。
2―4.経口食塩負荷試験
アルドステロン自律分泌を確認する試験である。
経口的に食塩負荷を行い,循環血漿量を増加させたときに,正常ではPAC値は低下するが,PAでは低下しない。
入院中の患者であれば,
食塩負荷食(10~12g/day)を3日間負荷後に24時間畜尿を行い,24時間尿中アルドステロン値で判定を行う。
生食負荷試験に比較すれば,外来検査でも実施可能ではあるが,合併症の多い症例では入院下での検査が望ましい。
PAの確定診断が得られた場合,
病型・局在診断目的で画像診断を行う。
PAの原因が,
アルドステロン産生腺腫(aldosterone-producing adenoma:APA)をはじめとする片側性であるのか,
特発性アルドステロン症(idiopathic hyperaldosteronism:IHA)をはじめとする両側性であるのかの鑑別が必要である(表2;文献[7]より引用)。
両側性分泌であれば,
手術による根治は困難であり,スピロノラクトンやエプレレノンなどの薬物療法が適応となる。
両者の鑑別のために,
まずはCT/MRIといった非侵襲的検査を行う。
通常のAPAは径が1.5cm未満のものが多いことから,
thin sliceでのCT検査が推奨されている[5]。
また,
腫瘍の病型診断および後の副腎静脈サンプリング(Adrenal venous sampling:AVS)のためにも,可能であれば造影CTが望ましい。
副腎腺腫検出におけるCTおよびMRIの感度・特異度の差を示すエビデンスはなく,
CT実施に制限がない限り,まずはCT検査を第一としている。
片側性分泌の可能性が高いと判断し,手術希望のある症例はAVSへと進む。
PAの最終的な手術適応の判断に際しては,AVSが必須である。
必須であるとする理由として,
950例の症例を用いたmeta-analysisで,
AVSとCT/MRIの結果を比較すると,37.8%の不一致があったとの報告があり[8],
CTなどで指摘される副腎結節が必ずしもアルドステロンを過剰分泌しているとは限らないからである。
AVSの省略の可否に関しては,
副腎偶発腫が少ない若年者に限り,一定の要件(35歳以下,低カリウム血症,片側腫瘍を確認できていることなど)を満たせば,AVSの省略を考慮してもよいが,十分なインフォームドコンセントが必要である[5]。
AVSの手法として,
左右副腎中心静脈でACTH刺激後に確実に採血を行う(図3)。
迅速コルチゾール濃度測定を用いて即時に判定を行うことも可能である。
SI(Selectivity Index;副腎静脈と下大静脈または末梢静脈とのコルチゾール濃度比)および副腎静脈血中コルチゾール濃度を考慮して,
カテーテル挿入の成否を判定する(図4)。
アルドステロン過剰分泌の判定においては,
PAC絶対値,LR(lateralized ratio;PAC/コルチゾールの左右比),CR(contralateral ratio;PAC/コルチゾールの副腎静脈・下大静脈比)を用いる(表3)。
今回のステートメントでも明記されていることではあるが,
LR,CRのカットオフ値に関しては,LR>4かつCR<1が最も一般的である[5]。
PAC絶対値の評価基準に関しては,
副腎静脈PAC>14,000pg/mlによって過剰側判定を行うことが推奨されているものの[9],今後も検討が必要とされている。
副腎静脈サンプリングで用いられる指標(文献5より)
副腎皮質シンチグラフィー(131I-アドステロール®シンチ)がAVSの代替となりうるかどうかに関しては,
131I-アドステロール®の集積が主に腫瘍径と相関し,アルドステロン産生性との相関性が弱いため,微小腺腫では偽陰性を呈する可能性がある[10]。
また,両側性病変でも集積に左右差があれば片側性と診断してしまうこと,サブクリニカルクッシング症候群を合併していた場合,その集積をPAと判断してしまうこと,
などの理由により,AVSを上回るようなものではないとされている[2]。
また,
近年ではシンチグラフィーの断層撮影であるSPECTが一般的となっているが,米国内分泌学会の策定したガイドラインには記載がない[1]。以上より,
AVSが実施困難症例・サンプリングエラーが生じた症例ならびにAVSを希望しない症例に対してのみ,デキサメサゾン抑制下副腎シンチグラフィーSPECTの施行を検討する。
副腎腺腫に代表されるPA片側病変に関しては,
血中アルドステロン濃度の正常化および高血圧の治癒や改善が期待できるため,病側副腎摘除術が推奨される[5]。
しかし,副腎腺腫によるPA治療においても,副腎摘除術がミネラルコルチコイド拮抗薬(MR拮抗薬)よりも長期的な臓器障害改善や生命予後に優れていることを示す明確なエビデンスはないので,
治療選択に関しては,患者に十分なインフォームドコンセントを得た上で決定すべき事項である。
PA両側症例や手術を希望されない片側症例に対しては,
MR拮抗薬を中心とする薬物治療を行う[5]。
しかし,
長期予後への影響は明らかではないため,個別の患者ごとに治療法を選択する必要がある。
PA治療後には,手術療法でも薬物治療でも,腎機能が悪化する場合があることには注意が必要である[11]。
PA診断の最新の指針である,日本内分泌学会編「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」に沿った形で,診断過程・治療指針について解説を行った。
特徴としては,
診断のプロセスを明文化し,エビデンスの蓄積を図っていくことに重点をおいた内容と理解できる。
また,AVSの重要性についても共通の理解として明記されている。
今回の策定によってエビデンスが蓄積されていけば,更なるガイドラインの改訂も予想される。
外科的治療を行う立場であっても,診断過程指針の変遷に関して,今後も注意が必要である。
- 1. Funder JW, Carey RM, Mantero F, et al.: The Management of Primary Aldosteronism:Case Detection, Diagnosis, and Treatment:An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab 101: 1889-1916, 2016
- 2. Funder JW, Carey RM, Fardella C, et al.: Case detection, diagnosis, and treatment of patients with primary aldosteronism:an Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab 93: 3266-3281, 2008
- 3. Ogihara T, Kikuchi K, Matsuoka H, et al.: The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH209). Hypertens Res 32: 3-107, 2009
- 4. Nishikawa T, Omura M, Satoh F, et al.: Guidelines for the diagnosis and treatment of primary aldosteronism--the Japan Endocrine Society 2009. Endocr J 58: 711-721, 2011
- 5. 日本内分泌学会「原発性アルドステロン症ガイドライン実施の実態調査と普及に向けた標準化に関する検討」委員会編:わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント 診断と治療社,東京,2016.
(コピペここまで↑)
いやあ、わかりやすいまとめでした!!!!さすがですねえ☆彡
私が調べ始めた2014年からは、隔世の感があるなあ。原発性アルドステロン症についての医療界の周知について。ここまでしっかり書いてあったら、診断後に手術を請け負う外科医や泌尿器科医だけでなく、患者もわかり易いと思います☆ - 読んでいただきありがとうございます。1日1回ずつ次の二つを押して戻ってきていただけると励みになります。よろしくお願いします。
- 私のもう一つのブログ「さよならしこり」(乳がんのブログ)も読んでくださると嬉しいです☆
2018年09月09日
全貌がまとめてある記事があった
一応念のため、貼り付けようと思いますが、元のページを当たってくださいね。
原発性アルドステロン症は,高血圧患者の3~10%と高頻度に認められ,適切な診断・治療を行えば治癒可能な疾患である。
心腎などの標的臓器障害の頻度も高く,早期診断の臨床的意義は高い。
本邦では長らく,日本高血圧学会,日本内分泌学会の両学会が別の診療ガイドラインを策定していた。
各ガイドラインにおいて診断手順に相違があり,専門医・施設間で,診断の指標・検査方法・判定基準などの詳細は十分に標準化されていなかった。
本邦における診療指針の統一化を図るため,2016年4月に日本内分泌学会より「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」が策定された。
外科医(泌尿器科医,内分泌外科医)も診断過程を熟知しておく必要がある。
本稿では,副腎手術に携わる外科医の視点から,最新の診療指針の整理を行いたいと思っている。
原発性アルドステロン症(primary aldosteronism;PA)は,アルドステロンの自律的過剰分泌をきたすため,
①水・Na貯留による体液依存性高血圧
②低カリウム血症,代謝性アルカローシス
を呈する疾患である。
高血圧患者において,3~10%と高頻度に認められ,適切な診断および治療を行えば治癒可能である。
高アルドステロン血症自体が心血管障害のリスクとなるため,心腎などの標的臓器障害の頻度も高いことから,早期診断・早期治療介入の臨床的意義は高い。
最新の米国内分泌学会の2016年の診療ガイドライン[1]では,スクリーニングを増やすように求めている。
本邦においても,米国内分泌学会による2008年の初版の診療ガイドライン[2]に続き,2009年に日本高血圧学会[3]が,2010年に日本内分泌学会が診療ガイドライン[4]を策定している。
各ガイドラインにおいて診断手順に相違があり,専門医ならびに施設間において,長年にわたり,診断の指標・検査方法・判定基準などの詳細は十分に標準化されていなかった。
本邦における診療ガイドラインの統一化を図るため,2016年4月に日本内分泌学会より「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント[5]」が策定された(図1)。
本ステートメントは,両学会のガイドラインをupdateした上で,診療指針の統一化を目指す内容となっている。
われわれ外科医(泌尿器科医,内分泌外科医)は,内分泌内科医によって手術適応と判断されてからPA診療に携わることが多いと思われる。
PAを呈する腺腫に関しては,機能性副腎腫瘍のなかでも,褐色細胞腫やクッシング症候群のように厳重な周術期管理が必要ではなく,また,腫瘍径も大きくないので,摘除は容易である印象がある。
だたし局在診断が必ずしも容易でない症例もあり,個々の診断過程を外科医も十分に理解した上で治療に当たるべきであると考える。
最新のコンセンサスステートメントに関しては,従来のガイドラインとは相違する点も認められている。
その点についてもまとめていきたい。
大阪大学においては,2016年のコンセンサスステートメント[5]が策定されてからは,こちらをベースとして診療を行っている。
現在の診断フローチャートを作成した(図2)。これに従い,順に検査の内容について紹介する。
1.PAC値・PAC/PRA比
高血圧患者全員がPAのスクリーニング対象とはなるが,特に
①低カリウム血症
②若年性の高血圧
③Ⅱ度以上の高血圧
③治療抵抗性高血圧
④副腎偶発腫瘍の存在
⑤40歳以下で脳心血管合併症を認める患者
に対しては,特に注意を払う必要がある。
(ゆま註③がふたつあるが、同じことなのかな↑。)
スクリーニング検査で最も簡便な検査は,
血漿アルドステロン濃度(plasma aldosterone concentration;PAC)および血漿レニン活性(plasma renin activity;PRA)を同時に測定することである。
PAでは原則として,PACが上昇し,PRAが減少するため,ARR(Aldosterone Renin Ratio=PAC/PRA)が上昇する。
ARR単独では偽陽性となる可能性があることから,
ARRに加え,PAC 120pg/ml以上であることを組み合わせることが推奨されている。
ARRのカットオフ値に関しては議論の分かれるところではあるが,日本内分泌学会[4],日本高血圧学会[6]のいずれもが
ARR>200を陽性として推奨している。
PACおよびPRAに関しては,種々の条件から測定ごとの変動を示すことがある。
日常臨床においては,簡便さが求められるスクリーニング検査としては,実施条件を厳密化することは望ましくないので,
まずは随時条件で測定を行い,適宜,厳密な条件(早朝,空腹,安静臥床後)での追加検査を行う[5]。
2.機能確認検査
スクリーニング検査にてPAを疑った患者については,
アルドステロンの自律性ならびに過剰分泌を確認するため,
機能確認検査(カプトプリル試験,生理食塩水負荷試験,フロセミド立位試験,経口食塩負荷試験)(表1)を行う。
従来の日本内分泌学会の診断指針においては,
経口食塩負荷試験を除く3つの機能確認検査のうちで,2つ以上陽性となった場合,PAとの確定診断を行っていた。
しかし,陽性数と診断の感度・特異度を検証した報告はなく,今回のステートメントでは,
上記4種類の検査のうちで,少なくとも1種類の陽性の確認を推奨している[5]。
以下,順を追って説明を行う。
2―1.カプトプリル試験
外来でも実施可能な簡便な検査である。
アルドステロン自律分泌を確認することを目的としている。
すなわち,
ACE阻害薬であるカプトプリルによりアンギオテンシンⅡを低下させても,PACが低下しないことを確認する。
カプトプリル内服前,内服60分後,90分後に採血を行い,ARR(60分ないし90分後)>200を陽性と判定する。
感度は優れるものの,特異度はやや低い。
2―2.生理食塩水負荷試験
本試験もアルドステロン自律分泌を確認することを目的とする。
本邦以外ではゴールドスタンダードとされている試験である。
生食2Lを4時間で点滴静注を行い,投与前後でPRAおよびPACを測定する。
PAでは循環血漿量を増加させてもPACが低下しないことを確認する。
すなわち,
負荷後のPACが60pg/mlを下回らない場合に陽性と判断する。
心・腎機能を検査前に十分に評価を行い,高血圧ならびに低カリウム血症のコントロールが必要である。
2―3.フロセミド立位試験
レニン分泌を刺激し,レニン分泌抑制の程度を評価することで
アルドステロン過剰分泌を機能的に評価することを目的とした試験である。
フロセミド40mgを静注後,2時間立位を保持し,立位のまま採血を行う。
循環血漿量が減少してもレニンが抑制されたままであることを確認する。
2時間後のPRA値が2.0ng/ml/h未満で陽性と診断する。
脳心血管イベントリスクの高い症例・不整脈が誘発されうる症例に対しては行わない。
2―4.経口食塩負荷試験
アルドステロン自律分泌を確認する試験である。
経口的に食塩負荷を行い,循環血漿量を増加させたときに,正常ではPAC値は低下するが,PAでは低下しない。
入院中の患者であれば,
食塩負荷食(10~12g/day)を3日間負荷後に24時間畜尿を行い,24時間尿中アルドステロン値で判定を行う。
生食負荷試験に比較すれば,外来検査でも実施可能ではあるが,合併症の多い症例では入院下での検査が望ましい。
3.病型・局在診断
PAの確定診断が得られた場合,
病型・局在診断目的で画像診断を行う。
PAの原因が,
アルドステロン産生腺腫(aldosterone-producing adenoma:APA)をはじめとする片側性であるのか,
特発性アルドステロン症(idiopathic hyperaldosteronism:IHA)をはじめとする両側性であるのかの鑑別が必要である(表2;文献[7]より引用)。
両側性分泌であれば,
手術による根治は困難であり,スピロノラクトンやエプレレノンなどの薬物療法が適応となる。
両者の鑑別のために,
まずはCT/MRIといった非侵襲的検査を行う。
通常のAPAは径が1.5cm未満のものが多いことから,
thin sliceでのCT検査が推奨されている[5]。
また,
腫瘍の病型診断および後の副腎静脈サンプリング(Adrenal venous sampling:AVS)のためにも,可能であれば造影CTが望ましい。
副腎腺腫検出におけるCTおよびMRIの感度・特異度の差を示すエビデンスはなく,
CT実施に制限がない限り,まずはCT検査を第一としている。
片側性分泌の可能性が高いと判断し,手術希望のある症例はAVSへと進む。
4.副腎静脈サンプリング
PAの最終的な手術適応の判断に際しては,AVSが必須である。
必須であるとする理由として,
950例の症例を用いたmeta-analysisで,
AVSとCT/MRIの結果を比較すると,37.8%の不一致があったとの報告があり[8],
CTなどで指摘される副腎結節が必ずしもアルドステロンを過剰分泌しているとは限らないからである。
AVSの省略の可否に関しては,
副腎偶発腫が少ない若年者に限り,一定の要件(35歳以下,低カリウム血症,片側腫瘍を確認できていることなど)を満たせば,AVSの省略を考慮してもよいが,十分なインフォームドコンセントが必要である[5]。
AVSの手法として,
左右副腎中心静脈でACTH刺激後に確実に採血を行う(図3)。
迅速コルチゾール濃度測定を用いて即時に判定を行うことも可能である。
SI(Selectivity Index;副腎静脈と下大静脈または末梢静脈とのコルチゾール濃度比)および副腎静脈血中コルチゾール濃度を考慮して,
カテーテル挿入の成否を判定する(図4)。
アルドステロン過剰分泌の判定においては,
PAC絶対値,LR(lateralized ratio;PAC/コルチゾールの左右比),CR(contralateral ratio;PAC/コルチゾールの副腎静脈・下大静脈比)を用いる(表3)。
今回のステートメントでも明記されていることではあるが,
LR,CRのカットオフ値に関しては,LR>4かつCR<1が最も一般的である[5]。
PAC絶対値の評価基準に関しては,
副腎静脈PAC>14,000pg/mlによって過剰側判定を行うことが推奨されているものの[9],今後も検討が必要とされている。
副腎静脈サンプリングで用いられる指標(文献5より)
5.副腎皮質シンチグラフィー
副腎皮質シンチグラフィー(131I-アドステロール®シンチ)がAVSの代替となりうるかどうかに関しては,
131I-アドステロール®の集積が主に腫瘍径と相関し,アルドステロン産生性との相関性が弱いため,微小腺腫では偽陰性を呈する可能性がある[10]。
また,両側性病変でも集積に左右差があれば片側性と診断してしまうこと,サブクリニカルクッシング症候群を合併していた場合,その集積をPAと判断してしまうこと,
などの理由により,AVSを上回るようなものではないとされている[2]。
また,
近年ではシンチグラフィーの断層撮影であるSPECTが一般的となっているが,米国内分泌学会の策定したガイドラインには記載がない[1]。以上より,
AVSが実施困難症例・サンプリングエラーが生じた症例ならびにAVSを希望しない症例に対してのみ,デキサメサゾン抑制下副腎シンチグラフィーSPECTの施行を検討する。
副腎腺腫に代表されるPA片側病変に関しては,
血中アルドステロン濃度の正常化および高血圧の治癒や改善が期待できるため,病側副腎摘除術が推奨される[5]。
しかし,副腎腺腫によるPA治療においても,副腎摘除術がミネラルコルチコイド拮抗薬(MR拮抗薬)よりも長期的な臓器障害改善や生命予後に優れていることを示す明確なエビデンスはないので,
治療選択に関しては,患者に十分なインフォームドコンセントを得た上で決定すべき事項である。
PA両側症例や手術を希望されない片側症例に対しては,
MR拮抗薬を中心とする薬物治療を行う[5]。
しかし,
長期予後への影響は明らかではないため,個別の患者ごとに治療法を選択する必要がある。
PA治療後には,手術療法でも薬物治療でも,腎機能が悪化する場合があることには注意が必要である[11]。
PA診断の最新の指針である,日本内分泌学会編「わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント」に沿った形で,診断過程・治療指針について解説を行った。
特徴としては,
診断のプロセスを明文化し,エビデンスの蓄積を図っていくことに重点をおいた内容と理解できる。
また,AVSの重要性についても共通の理解として明記されている。
今回の策定によってエビデンスが蓄積されていけば,更なるガイドラインの改訂も予想される。
外科的治療を行う立場であっても,診断過程指針の変遷に関して,今後も注意が必要である。
- 1. Funder JW, Carey RM, Mantero F, et al.: The Management of Primary Aldosteronism:Case Detection, Diagnosis, and Treatment:An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab 101: 1889-1916, 2016
- 2. Funder JW, Carey RM, Fardella C, et al.: Case detection, diagnosis, and treatment of patients with primary aldosteronism:an Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab 93: 3266-3281, 2008
- 3. Ogihara T, Kikuchi K, Matsuoka H, et al.: The Japanese Society of Hypertension Guidelines for the Management of Hypertension (JSH209). Hypertens Res 32: 3-107, 2009
- 4. Nishikawa T, Omura M, Satoh F, et al.: Guidelines for the diagnosis and treatment of primary aldosteronism--the Japan Endocrine Society 2009. Endocr J 58: 711-721, 2011
- 5. 日本内分泌学会「原発性アルドステロン症ガイドライン実施の実態調査と普及に向けた標準化に関する検討」委員会編:わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント 診断と治療社,東京,2016.
(コピペここまで↑)
いやあ、わかりやすいまとめでした!!!!さすがですねえ☆彡
私が調べ始めた2014年からは、隔世の感があるなあ。原発性アルドステロン症についての医療界の周知について。ここまでしっかり書いてあったら、診断後に手術を請け負う外科医や泌尿器科医だけでなく、患者もわかり易いと思います☆ - 読んでいただきありがとうございます。1日1回ずつ次の二つを押して戻ってきていただけると励みになります。よろしくお願いします。
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2018年09月08日
「にがり」について(hadazoさんとcocoさんに感謝)
(cocoさんより)
コメントありがとうございます。
カリウムの低下にはマグネシウム不足の影響がある傾向との事ですね。
検査結果は白内障の疑いだったのですか。
ゆまさんのブログで、hadazoさんの貴重なPA体験談はとても参考になりました。
関東方面は火曜日から台風が接近してくるようですね。
coco
(hadazoさんより)
2018年09月02日
コメントありがとうございます☆アップしますねー
ゆまさんの眼の病気が悪化しないことをお祈りしています。
※ 昨年眼科で瞳孔を開く点眼薬を滴下すると、家に帰った後血圧がかなり高くなってしまいました。
cocoです。
元気にされているとの事で安心しました^^
ゆまさんのブログは私の教科書です。
ゆまさんのPAはいつのまにか完治したような数値ですね。
そして、私の近状報告を1つ。
只今セララを中断し検査に向けて準備中です。
そして1年半ぶりに造影CTを撮った所、以前は否定された左副腎に12mm大の腫瘍が確認されました。
まだしばらくは暑さが続くと思いますが、くれぐれもご自愛ください^^
coco
水-電解質異常についての文章に、マグネシウムが不足するとカリウム値が低下するというのが書かれていました。
私がアルドステロン症だった頃、ある時お豆腐を食べた後に血圧が下がり、試しに「五島灘のにがり」を滴下して水を飲んだら血圧が下がり、襲い来る日々の不安感も軽減しました。
「マグネシウムが不足しているからカリウムの値が低くなる」のでは?と私は思いました。
ちなみに「五島灘のにがり」栄養機能食品(マグネシウム)は、他の製品より塩化ナトリウム少ないので安心です。
眼科での検査の結果は、白内障の疑いありでした。
台風が近づいているようですが、被害が出ないことを切に祈ります。
2018年08月26日
閉鎖していた記事を徐々に復活させています
2018年08月25日
65歳以上のPAの手術
2018年08月23日
お久しぶりでございます。(近況報告)
2018年06月01日
hadazoさんから
ゆまさん お久しぶりです。
(ここまで)
①「高血圧や糖尿病などが刺激になって内皮細胞が傷つけられると、その部分の血管壁の中に脂肪物質がたまって厚くなり、“おかゆ”のような状態(粥腫)になる」☟

(ここまで)
こんにちは
先日は台風で打撃を受けた関西ですが、暴風で瓦や様々な物が空を飛んでいた頃、昼寝してしまい、夕方目が覚めてから周囲の被害に驚いたhadazoです。
そして昨日は北海道の震度7。
暴風の中、寝てしまったのは、自己防衛機能が働いたのかもしれません。
医学は日々進歩するので、cocoさんもどうぞ焦らず、時間をも味方につけて治療してください。
少しでも体験がお役に立てたようで、嬉しいです。
横浜労災病院は初診が半年待ちなのですね!
横浜労災病院のPA患者の行列が、各地医院、病院へ分散することを心から願っています。
治るような気がしてきました。ありがとうございます。
辛い思いをしているPA患者の皆さんも、明けない夜は無いです。
(ここまで)
マグネシウムが不足するとどうなるか
マグネシウムが不足した場合には、不整脈が生じやすくなり、慢性的に不足すると虚血性心疾患、動脈硬化症などのリスクが高まります。また、吐き気、精神障害などの症状が現れたり、テタニー(筋肉の痙攣)を起こしやすくなったりします。さらに、近年、長期的なマグネシウムの不足が、骨粗鬆症、心疾患、糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクを高める可能性が示唆されており、今後さらに研究が進められることが期待されます。
マグネシウムの過剰摂取の影響
マグネシウムを摂り過ぎた場合は、過剰分は尿中に排泄されるので通常の食事では過剰症になることはありません。しかし、腎機能が低下している場合には高マグネシウム血症が生じやすくなり、血圧低下、吐き気、心電図異常などの症状が現れます。また、ダイエットや便秘などに効果があるといって摂取されている「にがり」(主成分は塩化マグネシウム)やサプリメントなど、通常の食事以外でマグネシウムを過剰に摂取すると、下痢を起こすことがあります。
マグネシウムを多く含む食品
マグネシウムは精製されていない穀類、野菜などの植物性食品に豊富に含まれています。そのほかに魚介類、肉類、海藻類、豆類などにもマグネシウムは多く含まれます。
きんめだい生100g(一切れ)にはマグネシウム73mg、ほうれん草生100g(2分の1束)にはマグネシウム69mg、玄米ご飯120g(茶碗一杯)にはマグネシウム59mg、納豆50g(1パック)にはマグネシウム50mgが含まれています。
読んでいただきありがとうございます。1日1回ずつ次の二つを押して戻ってきていただけると励みになります。よろしくお願いします。